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2018年2月17日 (土)

荼毘に付しました

2月15日午後8時、吉右衛門を荼毘に付しました。
お忙しい中、駆けつけてくださっためいさん(吉の預かりボラであり、吉と私との縁を結んでくれた方です)ありがとうございました。
人間と同じように式を執り行ってくださった、めの里ペット霊堂のご住職にも感謝申し上げます。

私が勝手に一目惚れして連れ帰った吉を、大事に大事に看てくれたパパさんにも、あらためてありがとう。
最後の数日は、私よりも上手に吉に食べさせてくれたし、吉もパパさんが作ってくれたご飯をよく食べたね。
夜も騒々しかった吉を、温かく見守り、可愛がってくれたおばあちゃんにも感謝です。
13日の午後には、モミジも吉の様子を見に来てくれたね。急に鳴く吉が怖くて、居間に来られなかったのに。
吉との別れが近いことがわかったのかな。
寂しいね。


取りあえず居間の窓際に安置。
Dsc_0509

仏壇的なものを作って手元に置いておくか、ツクネやハツと同じように散骨するか決めかねています。

 

以下は、吉の最期に関する私の覚え書きです。ずるずると長い文章ですし、写真やイラストもありません。生々しい表現もあるので、どうかスルーしてください。
私の場合、文にすることで気持ちの整理がつくみたいです。
個人の日記にでも書いておくべき内容ですが、大切な思い出を大事な場所に置いておきたいという気持ちもあり、ここに記しておくことにします。
そのうちに、吉の目線で「お絵かき」をしようと思います。

(=^^=)(=^^=)(=^^=)

 

「おい」
ポンと背中を叩かれて、私ははっと目を覚ました。吉の隣に横になって、彼の手を握っていたつもりだったが、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。

「吉が……
パパさんに言われるまでもなく、吉の様子がおかしいことにすぐに気づいた。
前足を突っ張って「う-」と、妙な声で唸っている。息を吸わないまま、吉は再び唸った。
「吉ちゃん! 息、吸って!」
私は、吉の胸を押した。パパさんは、頬を手の平で軽く叩いていた。

3度目の唸り声の後、吉は動かなくなった。2月14日、午前1時45分のことだった。

 

あとで聞いた話。
オリンピックの中継を見ていて、パパさんもうつらうつらしてしまったらしい。ふいに目覚め、テレビがつけっぱなしになっていていることに驚いたという。
「吉は?」と、ふりかえってみると、身動き一つしていない。
「まさか……
じっと目を懲らしてみれば、微かに胸が上下している。
ほっとして、吉の背に手を当てたら、吉が小さく「ファッホー」と鳴いた。手足を突っ張り始めたのはその直後。
そこで私に声をかけたとのこと。時間にしておよそ5分。

「吉は別れを言いたくて、俺たちが起きるのを待っていてくれたのかな」
パパさんがそう言った。
あるいは、別れの時を、パパさんが直感したのではないか、もしくは、3号が吉を迎えにきて、パパさんを起こし、吉に別れの言葉を言わせたのではないか――と、私はそんな想像をしている。

(*´ェ`*)(*´ェ`*)(*´ェ`*)

「吉は寝てる?」
「うん。よく寝てる」

吉が息を引き取ってからも、パパさんと私との間で、そんなやりとりを何度も交わした。
吉の顔はとても穏やかで、まるで眠っているようだった。

「ほら、起きて」
毛布の上から、ぽんぽんと背中を叩いてみる。でも目覚めない。
「吠えてもいいんだよ」
首のあたりを撫でてみる。でもやっぱり目覚めない。
自慢の白くて長い首毛は、変わらずふかふかしていたが、少しひんやりしていた。

連続して1時間とは眠らず、目覚めている間はずっと鳴いていた吉が、何も言わずに目を閉じていることが悲しくてならなかった。

何を食べても味が感じられない。何かをしようとしても、ぼんやりと手が止まってしまう。
「らしくない」と、自分でも思った。

14日の午前中に、パパさんめの里ペット霊堂に電話をした。
「15日の夜8時しか空いてないって」
「混んでるんだね」

ここ数日の寒さが、老犬老猫、病気の犬猫に応えたのだろう。霊堂は予約でいっぱいとのことだった。寺に併設され、ペットの火葬や葬儀もしてくれるその霊堂は、先代犬のツクネやハツの時にもお世話になった。そう言えば、ツクネは1月、ハツは3月に亡くなっている。

「バスタオルで包んでくれって。あと、棺に入れる物」
「棺に入れる物?」
「首輪とか、好きだったおもちゃとか、おやつや花が一般的だそうだよ」
「吉が好きな物って、なんだろ」 

何も思い当たらない。

2016年の暮れ、危篤に陥って以降、吉は固形物がうまく食べられなくなった。ジャーキーはもちろん、この数ヶ月は、大好きだった薄切り牛肉やマグロのさしみも口にしなくなった。

「おもちゃで遊んだりもしなかったし」
「ここ1年は首輪もしていないし、オムツやハーネスとか拘束される物、好きじゃなかったものな」
「うん、基本、裸族だから」

強いて言えば、私が添い寝して、私のタオルケットを頭にかぶせると、寝付きが早かった。慣れた匂いがあれば安心できたのだろう。
でも、タオルケットではがさばるから、私が枕カバー代わりにしていたバスタオルで包んであげることにした。洗濯もしていなくて、私の髪の匂いと吉自身のよだれつきのバスタオル。死に装束にはふさわしくないけれど、「そばにいるよ」の気持ちを込めて。


「お花を買いに行かないとね」
「おれも行くよ」
「え?」
一瞬、驚いた。
この1年と2ヶ月、吉から目が離せなかったので、私かパパさんのどちらかが家にいるようにしていた。腰の悪いおばあちゃんには、8㎏の吉を抱いてトイレをさせたり、水を飲ませたりするのは無理。だから、パパさんと一緒に出かけることはなかった。
「そっか」
もう、二人で出かけても、吉は困らないのだ。
そのことも悲しかった。

近くのショッピングモールへ、菓子折と花を買いに行った。
パパさんの車の助手席に乗り込む。
「そこへ乗るのは久しぶりだな」
「うん」
この数ヶ月、パパさんの車で出かけるのは、吉を病院へ連れて行く時だけ。その時は、吉を抱いて後部座席に乗っていたので、助手席に乗るのは、本当に久しぶりだった。

花屋には、きれいな花がたくさん売っていたけれど、結局、仏壇用の小菊の切り花を買った。
地味な柴系の雑種。吉には、小菊が似合うと思った。

 

それから葬儀までの数時間、私は吉の顔をのぞき込んでは「起きて」と声をかけたけれど、吉は目を覚まさなかった。

(=^^=)(=^^=)(=^^=)

午後7時過ぎ、めの里ペット霊堂へ連れていくにあたり、私は吉をバスタオルで包んで抱きあげた。いつものように、左腕を胸にさしこんで、右手でお尻を支える。すでに硬直が解けていて、抱き心地は以前と変わらない。気温のせいか、少し温かく感じた。
病院へ行く時と同じように、後部座席に乗った。
姿勢も、重さも、感触も、視界に写る車内の景色も、吉を抱いて病院へ行った時と変わらない。
ただ、吉が鳴かない――それだけが違った。

 

「こんばんは」
霊堂で、吉を棺に収める準備をしていると、“めいさん”が待合室からの階段を降りてきた。
めいさんは、吉が我が家へ来る前に、吉を預かっていてくれたボランティアさん。以前からの知り合いでもある。
吉とモミジを迎えることができたのは、めいさんのおかげ。だから、吉が亡くなった朝、一番に連絡し、葬儀の場所や時刻もお知らせした。
めの里ペット霊堂はめいさんの家の近く、しかも葬儀の時刻は午後8時。
昼間の葬儀だったら、会社勤めをしているめいさんは、吉の顔を見られなかっただろう。

吉との出会いも、偶然が重なったが、別れも偶然が重なった。

迎えたばかりの頃、吉は心細げに「ヒンヒン」鳴いた。飼い主さんにセンターへ持ち込まれ、保護ボラさんからめいさんのお宅へ。息子さんのゆうくんにも可愛がってもらった吉は、おそらくめいさんゆうくんが恋しかったのだろう。
葬儀が午後8時になったのは、最後にめいさんに会うためだったのだろうか。

何だか見えない力が、働いているような気がした。

収骨までの時間、待合室で住職とめいさんパパさんと私とで雑談した。他愛のない会話で心が安らいだ。
待合室には大きな黒猫がいて、ずっとパパさんの膝に乗っていた。まるで慰めているように。
猫の3号が亡くなった夜を思い出す。あの日、私は吉の首に顔を埋めて眠った。3号がいない寂しさを、吉が埋めてくれた。
3号の死後、吉は間もなく危篤に陥り、奇跡の生還を果たした。私のためにこちらに残ってくれたのではないか、などと妄想したりもしたが、
今度は、吉がいない寂しさをどうやって埋めたらいいのだろう。

 

「ずいぶん、小さくなっちゃったね」
骨になって出てきた吉を見て、そうつぶやいた。
「でも、おでこは吉だ」
思わず、額に触れる。
「面影は残っているものですよ」
住職がおっしゃった。
とても悲しかったけれど、気持ちに少しだけ区切りがついた。

収骨後、住職がまた読経してくださった。
たぶん般若心経。
仏教では、人間以外の生き物は畜生に分類され、本来は仏の教えを説いたりはしないのだろうが、飼い主の気持ちに寄り添って家族の一員として扱ってくれることが有り難かった。

 

帰りは、吉の骨壺を抱いて、助手席に乗った。
「死者を祀るのは人間だけかな……
「どうだろ。他の動物ではそんな話は聞かないけど」
「お葬式って大事だよね。一つの儀式を終えるたびに、薄皮を1枚はぐみたいに、死んだことを受け入れていくような感じがする」
「そうだな」
車の中で、パパさんとそんな話をした。

吉の骨壺は、家族が見えるように居間の窓際に置いた。“めいさん”からいただいた花束を飾る。“パパさん”が、フードを供えた。
このまま手元に置いておくか、ツクネやハツと同じように庭に散骨するか、まだ決められない。

 

私は特定の宗教を信仰しているわけではなく、死んだものがどこへ行くのか知らない。
魂は生まれ変わるのか、天国へ行くのか、黄泉へ行くのか、根の国へ行くのか、
そもそも魂というものが存在するのか。

それでも、吉が今、安らかであることを祈らずにはいられない。
虹の橋のたもとで、ツクネやハツや猫の1号2号3号と一緒に、私たちを待っていてくれたら嬉しい。
吉のことだから、元の飼い主さんや、めいさん”“ゆうくんも待つのではないか、そして、遠い未来に、みんなで虹の橋を渡るのではないか――そんなことを夢想している。

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コメント

またもやすみません。。
寄り添うこともできず、励ましの言葉も持たずの私ですが、読みながら堰を切ったように涙が溢れます。

吉さんの最期の様子、ろくすけとよく似ていて、あの時の想いが蘇ります。切ないです。。。

吉さんは栞さんとパパさんが起きるのを絶対待っていたのだと私は思うのです。
大好きな家族に見守られて旅立てた吉さん。
お空から”ママさん”と”パパさん”と”おばあちゃん”を見守っていてね。
再び会えるその時まで。

きづあすか様

ひゃ~~。読み手を意識せずに、単に垂れ流しただけの文を読んでいただいて、とても恐縮しておりますsweat01
吉を失ったことは、予想以上にダメージが大きくて、
文にしたらクールダウンできたのですが、今度はダウンしっぱなし。

ろくさんの最期に似ていたとのこと。ろくさんも脳疾患があって、長い闘病生活を送りましたものね。

悲しみが思い出に変わるまで、しばらく時間がかかりそうですが、
仲間がいると思うと救われます。
ありがとうございます。

読みますとも、もちろん、熟読です。

完全に立ち直ったとは言えない私は全く手本になりませんが、少しだけ共有させていただけるかなと。。。

栞さんのイラストも文章も、お人柄が表れていて大好きなんです。
またそのうちにここで吉さんに会える日を楽しみにして待っています。

きづあすか様

重ねてありがとうございます。
まだ何かの拍子にぼんやりしたり、涙が出たりしてしまいますが、少しずつ日常を取り戻しています。(この気分、きっとあすかさんと同じ)
近いうちに吉の思い出やモミジの様子などお知らせしますね。

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